ガザ地区および周辺地域における深刻な事態についての声明
私たち、公益財団法人日本クリスチャン・アカデミーは、ガザ地区および周辺地域において現在進行中の深刻な事態を深く憂慮し、下記の声明を発します。
パレスチナ自治区とイスラエルを含む中東・オリエント地域は、古代からさまざまな文明・文化を発祥し、人類に大きな影響を与え続ける宗教的思索の淵源地のひとつでもあります。この地域で多くの葛藤、軋轢、紛争、戦争、占領などが生起しつづけたことも事実です。第二次世界大戦後より一貫して、私たちは宗教者の立場から、さまざまな対立を克服し、和解へと至る道を模索し、祈り、必要な訴えを続けてまいりました。紛争を調停し、対立を和解するためには、暴力や武力、戦力による威嚇と行使ではなく、「はなしあい」が必要です。
いま、この地域では「はなしあい」どころか、際限のない武力と暴力の行使が続いています。この深刻な事態により、亡くなられたすべての方々に深く哀悼の意を表します。また、心と身体に傷を負い、十分な治療と医療も受けられないまま、いまなお生命の危機のなかにある方々と共にありたいと願っています。そして、悪化を続ける事態が国際社会の分断をさらに拡大し、差別や偏見、憎悪の渦に人々が巻き込まれてゆくことを危惧し、心から心配します。
私たちは、どのような国家、組織、権力、または勢力によるものであっても、武力行使と暴力行為を認めることはありません。無辜(むこ)の人々の生命を奪う攻撃の即時停止を強く訴えます。不当に拘束されているすべての人々が一日も早く解放され、自由を取り戻し、必要な援助と支援を受けられるよう強く要請します。
ここに至るさまざまな要因は枚挙にいとまがなく、複雑にこみ入った歴史の積み重ねがあること学ばなければなりません。私たちは日頃から強い関心を抱き、歴史に蓄積された偏見を脱して、理解と連帯が必要であることを自覚してきました。これからも、この地道な活動こそが深刻な事態の回避につながり、平和の実現に役立つことを信じ、公益財団法人としての活動を続けます。
日本国政府ならびに国連関係機関にあっては、公平公正な原則を厳守し、なによりも生命こそが尊ばれ、「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする」祈りが実現される国際社会のために、惜しまぬ努力を継続されるようにと要請します。
2023年11月10日
公益財団法人 日本クリスチャン・アカデミー
ロシアのウクライナ軍事侵攻に反対する声明
2022年4月22日
日本クリスチャン・アカデミーは、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を深く憂慮し、反対を表明します。去る2月24日に開始された軍事侵攻によって、これまでに両軍のみならず多くの尊い命が失われ、傷つけられています。失われてよい命は一つもありません。ウクライナはロシア領土に対する攻撃をしていません。ロシアがウクライナに軍事侵攻をすることは、不戦条約1条や国連憲章2条が禁止した他国に対する侵略戦争といえます。ロシアの軍事侵攻は明確な国際法違反であり、ロシアは軍事侵攻を即刻停止し、撤退するべきです。
プーチン大統領は2月24日の演説で核兵器の使用を示唆しています。また、生物化学兵器など非人道的な兵器がロシア軍によって使用されることへの危惧が高まっています。日本クリスチャン・アカデミーは、1945年8月に起きた原爆投下と、被爆を体験した国のキリスト教団体として、2度とこのような惨禍が繰り返されないことを願い、祈ってきました。また、ウクライナのチョルノービリ原発事故の惨劇を繰り返してならないことは言うまでもありません。ロシアも加盟するジュネーブ条約第一追加議定書には、原子力発電所など危険な工作物等への軍事攻撃を禁じています。この度のロシアによる軍事攻撃とそれに伴う核使用への言及は、世界を破滅の道へと導くことを暗示しています。ロシア軍の軍事侵攻が長期化することにより、核兵器の使用が現実化すること、さらに偶発的な攻撃を含め原子力発電所の惨事が繰り返されることを危惧し懸念します。ロシアがウクライナへの軍事侵攻を即刻停止し、直ちに撤退することを求めます。
戦争によって傷つき大きな犠牲を強いられるのは無辜の市民であり、脆弱な立場にある人々です。ロシアの攻撃を受けた都市、地域では、女性、子ども、障がい者、高齢者など弱い立場にあるおびただしい人々が、移動手段、食料、水、薬、救急施設などへのアクセスが断たれ、国内外に避難をしています。ロシアは、避難民に危害を加えることなく、国際的なNGOなどの人道的支援活動を妨げないことを強く求めます。ロシアはウクライナの領域内で開始した軍事作戦を直ちに停止し、一般市民への攻撃、虐殺を中止すべきです。
戦争の歴史は武力の行使が新たな憎悪を生み、報復の連鎖を断ち切ることができないことを教えています。日本クリスチャン・アカデミーは、あらゆる武力行使に反対します。聖書は「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイによる福音書5章9節)、「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる」(マタイによる福音書26章52節)と教えています。ロシアはウクライナへの軍事侵攻と戦争の拡大を一刻も早く止めることを求めます。日本クリスチャン・アカデミーは人と人との「はなしあい」を大切にし、対話することを活動の中心としてきました。軍事力や核兵器による抑止力に依拠しない対話によるウクライナとロシアの平和構築への努力を願って止みません。
公益財団法人日本クリスチャン・アカデミー